影踏み
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(旅先にて)
「ねえ、影踏みしない?」
「影踏みって、わらべ遊びの? 急にどうしたのよ」
「この子今オカルトに凝ってるのよ。月明かりで影踏みすると神隠しに遭うんだ、とか何とかって」
「うわ、有り得ない上にベタだね、それ」
「まあいいじゃない。久しぶりに五人で集まれたんだし、 旅の思い出ってことでやってみようよ」
「……何もなかったね」
「当たり前じゃん。ていうか、残念そうな顔するなよな」
「あ、でもDの影、薄くなってない? 前からか、はは」
「ひっどー。Cがでかすぎて見えないだけだよ」
「でも面白かったよね。満月もきれいだったし」
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(十日後)
「写真できたよー」
「見せて見せて! おお、美しい。私らって写真映り良いよねー(笑)」
「あ、でも真ん中空きすぎじゃない? これじゃ二人組ずつに見えるし。仲悪そう(笑)」
「ほんとだ。ていうか今もそうだね。D,もっと詰めなよ」
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(三週間後)
「かんぱーい。今年も一年、お世話になりましたー」
「お世話になりましたー。今年はみんなで旅行できたし、楽しかったなー。来年もひとつよろしくってことで」
「うん、卒業後もよろしくひとつ。よし、今日は忘年会ってことで、言いたいこと何でも言っちゃおうぜ。
そして飲もう、って、これはいつもだけど(笑)」
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(二ヵ月後)
「――違う違う、それは裏編みだって。表編みはこっちから針を入れて、そうそう。全く、そんなんで
バレンタイン間に合うの? 他人事ながら心配だなあ」
「やばくなったら手伝ってもらうし☆ やだなあその冷たい目、四年間二人で通学した仲じゃないで
すかー、それは家が近いからだとか言わないで、いやもうほんとお昼奢らせてもらいますんで、
何ならデザートもつけますんで。……ありがとうございますー、頼りにしてます、A様」
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(半年後)
「はあ、四年間の大学生活もやっと終了か。まったく、気の合う友達は見つからないし、灰色の日々
だったわよ。まあ大企業に就職決めたし、これからは心機一転、薔薇色の社会人生活を楽しむん
だから……って、あれ、私、 何か 透 け
て、
」
(了)
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